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野上弥生子エピソード【10】


伯母のご馳走

伯母の家に行くと、いつもにこにこして私共を歓迎してくれます。炊事場でヤカンにお湯を沸かし、お茶を入れて、お盆にのせてしっかりした足どりで私にお茶を出してくれました。近所のウナドン屋さんに電話して、持ってきてもらうと必ずその場で現金でお代を払います。ウナドン屋さんは馴れているので、ウナドンを届けると同時に領収書を持ってきます。お金にはきちんとしておりました。
 一緒に外出した時でも、ご馳走してくれる事もあります。どこの親子丼がおいしいと言って連れて行きます。鎌倉の東慶寺にお墓参りに行った時は、お寺の前のおそばがおいしいと言って、必ずその店でご馳走してくれます。臼杵の商家に生れ、お金の貴重さを知り、質素、倹約して生活しておりますので、伯母のご馳走はその程度のものです。一番のご馳走は、竹葉のウナドンです。今のお金でいえば、3千円が最高です。

フンドーキン醤油株式会社会長
小手川力一郎

弥生子の実家「小手川酒造」


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